2015_03
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(Tue)17:24

『ハザール 謎の帝国』


ハザール 謎の帝国ハザール 謎の帝国
(1996/03)
S.A. プリェートニェヴァ

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昨日、「ちゃんと勉強しなきゃね!」などとえらそーに書いたけど、実際のところ、今日明日生きていく上で何の役にも立たない知識の方に興味関心が湧きます。
ムダ知識上等!
千年以上も前の、教科書にも載ってない国のことを知って何になるの?もっと他に学ぶべき事あるんじゃない?などという現実をわきまえた意見を言ってはいけない。

読み終わって既にだいぶ経ち、記憶があやふやになってきてます(早い)。
でも考えてみたら、どうせいつも内容とは関係ない脱線しか書かないんで、まーいーか。

結論から言いますと、面白かったです。
本文の内容ももちろん興味深かったんですが、何より、この本の構成が面白かったです。
その構成ですが;

 ・訳者前書き
 ・著者序文
 ・本文
 ・年表
 ・訳者解説
 ・参考文献表
 ・付録(本文に引用されている文献の再翻訳)

という感じです。

…普通じゃん。
と思いますよね。
でも、250ページ足らずの本の約半分が、訳者解説その他で占められてるなんて、面白いと思いません?
そう、本文は、序文を含めても120ページしかないんです。
残りはガッツリ訳者の独壇場。
年表にしたって、原著の年表に訳者が書き足したものだし、参考文献も、原著の参考文献は入手困難という理由で割愛し、訳者による参考文献表になってるし。
つまりこれって、翻訳本というより、翻訳を添えた訳者の研究書、ってことです。
ということはつまり、同じテーマについて2つの異なる視点から書かれている、ということです。
うん、面白かったよ。

本文は、7世紀に出現し10世紀に滅びたハザールという割と正体不明な遊牧民国家の実像を、各国文献に散見されるこの国についての言及と考古学資料を紡ぎ合わせて明らかにしようというものです。
旧ソ連で発刊された「祖国史」シリーズの一冊です。
黒海・カスピ海北辺の地にあったハザールは、そっくり旧ソ連領内だったので、「我が国の歴史」本ってことです。
今は多分、一部ウクライナ。
きな臭さ現在進行形の地域ですね。イヤですね。

この本に限らず、今まであれやこれや見たり読んだりしてきて最近思うのは、自国の歴史を自国民が語ると何か偏らないかい?ということです。
「こうあって欲しい」「こうである筈だ」という意識がどうも働いてしまう気がするのです。
そういうわけでこの本は、とりあえずハザールとは何の関係もない日本人(=訳者)による考察も同時に読めるので面白いです。
日本史も、外国人研究者による資料を読めば、きっと色々違って面白いかもしれない。
そーゆーの嫌いな人もいるかもしれないけど。
最近、日本スゲー日本人スゲーな自画自賛的TV番組が多くてちょっと引き気味なんだけど、主観じゃない別の視点を知れば、より客観的になれるんじゃないかと思うのです。。

本文、解説の詳しい内容については、興味のある方は自分で読んでね、ということにして、ここでは巻末付録の「ハザール王ヨセフの返書」について少し…。
これは、既に衰退期に入ったハザール国のヨセフ可汗(読みはカガン。王とか皇帝とかそんな感じの意味。研究者によって捉え方が違う)が、遠くイベリア半島に住むイスラム教国の役人から受け取った手紙への返書です。
なんでそんなとこから手紙が来たかというと、その役人はユダヤ人で、はるか遠い東の地にユダヤ教の国があると風の噂で聞いて興味を持ち、王様宛に手紙を書いちゃった、ということです。
やるな、この人。
そしたら返事が来ちゃったと。
すげーな。
可汗はその返書で、民族のルーツ、国の歴史、支配領域などについて長々と夢のように語っているのだけど、その頃実際の国は既に終焉目前なんですね。
終わりが近づいていることを感じつつ、国の華やかかりし頃を懐かしんでる、みたいな切なさを感じます。
実際どういうつもりだったかは知らんけど。
もしかしたら「まだまだ余はデキる子だー」と思ってたかもしれないけど。

非常に興味深いのは、元の手紙の主が、イスラム教の国(コルドヴァ)のユダヤ教徒で、役人もやっちゃってるってことです。
この頃は宗教的に寛容だったんだね。

ハザールについては、ユダヤ教の国だったことで、現代のユダヤ人のルーツがどうとかいうデリケートな部分に触れるので、何やかやと面倒くさいことがあるっぽいです。
宗教にはだいぶ無関心な日本人的には、なかなかわかりにくいところです。
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