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(Tue)14:44

『東ゴート興亡史』


東ゴート興亡史―東西ローマのはざまにて(中公文庫BIBLIO)東ゴート興亡史―東西ローマのはざまにて(中公文庫BIBLIO)
(2003/04/24)
松谷 健二

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読み終わって少し経つので、記憶が曖昧になってきてるけど(もう?)、すっかり忘れないうちに書きます。

著者は、『ペリー・ローダン』シリーズの翻訳で知られる方です。
などと知ったようなことを書いておいて、くだんの『ペリー・ローダン』シリーズを読んだことは多分ない…(~.~;)
いや、もしかしたら大昔、誰かに借りてちょっとは読んだかもしれないけど、記憶にないから読んでないのと同じ…などという個人的回想はどうでもいいとして★
著者は、ドイツ文学者にして、SFとかエンターテイメント系作品を多く翻訳している翻訳家、作家、です。
何でこんなことをいちいち書くかというと、わたし的にこの点がネックと感じたからです。

結論から言うと、これは歴史書・研究書ではなく、歴史読み物です。
例えるなら、「マンガ 世界の歴史」みたいなものです。
あるいは、TVで放映される歴史ドキュメントみたいなものです。
とっつきやすく読みやすい文章なので、アマゾンのレビューを見ても概ね高評価ですが、これを主な資料にレポートなど書こうとするのはやめといた方が…と思っていたら、アマゾンのレビューの中に「小論文を書く資料に使った」というのがちらっと目に入ったので、大丈夫だったかなこの人、ちゃんと他の資料もあたったかな、なんて余計な心配をしました。

簡単に言えば、客観性、俯瞰的視点に欠けるんですね。
著者の思い入れなど、感情が入り込んだ文章になっています。
別に「この人は好きだ」「こいつは嫌いだ」とはっきり書いているわけではないけれど、レトリックから行間に著者の感情が滲み出ちゃってます。
文学者、作家の性なんですかねえ…。
そんなわけで、サクサク読める入門書としては大いに楽しめるから、論文調を読むのは苦痛だけど、このテーマに興味がある、という人には良いと思います。
でも、資料として読むならば、著者による脚色が入っていることを承知した上で読んだ方がいいと思います。

東ゴートは著者にとって相当に思い入れの深いテーマだったようなので、もしかしたらこれで歴史小説を書いてみたかったのかも?などとも思いました。

もう一つ、これは編集者の頑張りが足りなかったのかもしれないけど、もっと詳細な地図、年表、家系(人物相関)図などの図版をつけて欲しかったです。

以上、珍しくレビューらしいレビューを書いてしまいました。
この先はいつも通りただの脱線です。

先に読んだ『スキタイと匈奴』が、フン族国家の落日で終わっていたのだけど、この本の第一章の半分以上がフンの、最後の王アッティラにまつわる話です。
その項で、5世紀半ばに東ローマ帝国の外交使節団の一員としてアッティラのもとに赴いたプリスクスという人物が書き残した記録を長く引用してるのですが、これが興味深いです。
同時代人が書いた第一級資料として重要なのは当然ですが、その中に、語学に長けたメンバーの存在がちらっと書いてあるんです。
そーゆーことだよっ☆(何
『スキタイと匈奴』にちょいちょい出てきた「こいつらいったい何語で会話してたんだい」問題は、きっといつの時代にもいるこーゆー語学堪能者によって解決されていたんだよっ

このアッティラにしても、のちにイタリア半島に国を築き、その後東ローマに滅ぼされた東ゴート王国にしても、何を目指していたのかというと、既存の権威、当時の先進国であったローマ帝国(この時はもう東しかなかったけど、ローマ帝国はローマ帝国)になり替わろうとした、もしくは近づこうとした、という風に感じられてならないです。
記憶が思いっきりあやふやなうえに日本史は残念な私なんですが、豊臣秀吉は公家になりたかったのだと。
つまり、既存の権威に憧れていたのだと。
一方家康はベンチャーみたいなものだったのか。
そんなことを聞いたか読んだかしたことを思い出しました。
既存のものになろうとするか、新たな道を切り拓くか、そのどちらが成功するか本当のところはわからないし、現代人は歴史の結果を知ったうえであーだこーだ言ってるだけだけど、フンも東ゴートも滅んだのを尻目に、当時の超ド田舎なガリア地方で着々と力をつけたフランク族が、その後ローマに代わってヨーロッパの中心になる国を築いたという事実に、何か感じるものがあります。

さて、今『ハザール』を読んでいるのだけど、東ローマ皇帝ユスティニアヌス二世という人が出てくるんです。
この帝に、ハザールの王様が妹だか娘だかを嫁にやり、その女性はテオドラと改名した、という記述がさらっとあります。
別にその後テオドラさんが歴史的に重要な役割を果たしたわけでもないんで、なんでわざわざこんなことを書いているのか疑問に思うところだけど、実は、東ゴートと戦って滅ぼした時の東ローマ皇帝の名前がユスティニアヌス一世、その妻の名がテオドラなんです。
先にこっち(東ゴート)を読んでたからピンときたけど、知らなかったらスルーしてるところでした。
ユスティニアヌス、テオドラ、というのは、ヨーロッパ人にとっては知ってて当然な組み合わせなんでしょうか?

『ハザール』はがっつり論文調だけど、面白いです。
そのうちまたグダグダ書くかもしれません。
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