2018_08
23
(Thu)15:29

Ancestral Journeys: The Peopling of Europe from the First Venturers to the Vikings


Ancestral Journeys: The Peopling of Europe from the First Venturers to the Vikings

日本語訳するとしたら、タイトルは『ヨーロッパ人はどこから来たか?』って感じかな?
遺跡から採取されたDNAと、現在住んでいる人達のDNAをもとに、過去から現在に至るヨーロッパ人の移動を解明しようという本。
面白かったですよー。
でも、いかんせんヨーロッパオンリーの話だから、日本語訳は出ないだろうなあ。

検証した時代は旧石器時代からヴァイキングの時代まで。
ヨーロッパに現生人類が到達したのは4万6000年前、と書かれてます、前書きに。
ちなみに日本に到達したのは3万8000年前くらいだそうです。
やっぱりヨーロッパの方がアフリカに近いからなあ。
それにしても他の人類種(すべて絶滅)が何十万年も前に出アフリカしていったのに比べて、発祥から10万年以上もアフリカ内で悶々としていた(かどうかは知らないけど)ホモサピが5,6万年前のある日アフリカから一歩踏み出してから全世界に拡がるまでの拡散の速さったら凄いもんですね。
何がホモサピに起きたんだろうか?
…ということに関してはこの本には書いてないけど、要は人類は(アフリカを出て以降)絶えず移動していたってことです。
人の移動、というと、つい「ゲルマン民族の大移動」を思い浮かべてしまって思考停止しそうだけど、別に大移動したのはゲルマン民族だけじゃないよ、というかむしろ人類にとって大移動は常態だったんだよ、ということをこの本は示唆しています。

よく「先祖代々この土地に住んでいる」を理由に領有権を主張するものだけど、実際のところどの程度代々続いていたかなんてわからないわけで。
そもそも「昔から〇〇」とか「伝統」とか「しきたり」とか言われるものも、その起源を探ってみると案外ここ最近50年、100年程度のことがよくあるらしい。
人がひとり直接見聞きできる「歴史」は、祖父母から聞く話を最古に、せいぜい100年分だというから。
(最近は寿命が伸びてるから120年分くらいになってるかもしれない…)

人の移動範囲にまあまあ制限がある島国日本の場合は条件が違うかもしれないけど、ユーラシア大陸の西端、アフリカ大陸ともぐるっと回れば地続きなヨーロッパは、絶えず人の流出入があった、ということをDNA解析から導き出しています。
移動の原因になるのは主に気候変動で、寒くなった、暑くなった、植生が変わった、獲物がいなくなった、などを契機に別天地を求めて歩き回った、というのが人類のもともとの生態なんでしょう。
ん?ということは、かつてアフリカは10万年以上にわたってホモサピにとって生き延びやすい環境だったのかな?

最近環境問題がかまびすしく言われて、やれ「異常気象」だやれ「地球が悲鳴を上げてる」だの言われるけど、環境が変わっていくのが地球のデフォルト、たかが過去1万年ほど気候が安定していて人類の繁栄にとって都合が良かったからと言って、その状態が永遠に続くなんて夢々思うことなかれ、ってことだと思います。
…ということを説いている本ではないけど。
むしろ、日本人にはなかなか理解しにくいヨーロッパの複雑な民族問題を念頭に、民族の純血なんて妄想で、人はもっと複雑に入り混じり合っているんだよ、ということを言外に言おうとしている気がする。

最近は考古学・歴史学に科学が取り入れられて、従来「状況証拠的に多分こうだよねー」な感じの推測だったり、研究者の個人的偏見だったりした見解が、科学的考察によって証明されたり覆されたり新発見があったりしてて面白い。
もともと考古学って理系と文系のハザマみたいな学問なので、これからはより客観的に色々と解明されていくでしょうから、楽しみです。

残念ながら著者は今年の春に亡くなったそうです。
もともとは建築史家だったようですが、近年はヨーロッパの先史時代から古代の歴史に興味を移し研究していたみたいです。
その集大成のような本なのかな?
きっとまだまだ研究したいことがたくさんあったでしょうね…。
RIP
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